028-622-1991
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心臓外科とは

心臓外科とは

心臓外科とは

心臓外科とは、心臓や血管に生じた問題を手術などの外科的な方法を用いて治療する、医学の専門分野のひとつです。病院によっては、心臓血管外科となっていることもあれば、心臓外科と血管外科が分かれていることもあります。

心臓外科で働く医師は、心臓外科医です。

心臓外科医は、心臓とその周りの主要な血管の手術を行うために、高度な教育と訓練を受けた医師です。ただ一言で心臓外科医と言っても、実際はいくつかの専門分野に分かれており、例えば小児に対する手術などのように、特定の種類の心臓手術を専門に行っている場合もあります。

心臓外科で扱う病気

心臓外科では、手術が必要なあらゆる心臓の病気を治療しています。これには交通事故のような外傷から、生まれながら持っている心臓の構造異常を修正することまで、あらゆるものが含まれます。

心臓外科医を必要とする最も一般的な疾患は、先天性心疾患、成人してから発症する心疾患、そして血管の異常の3つに分類されます。

先天性心疾患

生まれてきたばかりの赤ちゃんが抱える心臓の構造的な異常、つまり先天性心疾患が、まず心臓外科が扱う病気として挙げられます。

この先天性心疾患を主に扱う心臓外科医は、小児心臓外科医とも呼ばれます。小児心臓外科で扱う病気には、生まれつき左右の心房や心室の間にある壁に穴が開いている心房中隔欠損や心室中隔欠損などの病気などが含まれます。

そのほかにも、本来は2つあるべき心室が1つしかない単心室症、左心低形成症候群や肺動脈閉鎖症、心臓につながる血管の構造が正常とは異なる完全大血管転位などの病気もあります。

フォロー(Fallot)四徴症と呼ばれる先天性心疾患では、心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈の騎乗、右室肥大が合併しています。根治には手術が必要となる、チアノーゼ心疾患として代表的なものです。

これらの病気のなかには一回の手術で治療が完結する場合もあれば、子どもの成長に合わせて複数回に分けて手術を行う場合もあり高い専門性が求められます。何よりも、子どもは成長しますので、手術後も長く子どもやその家族と心臓外科医の付き合いが続くこともあります。

なお先天性心疾患の診断が大人になってから行われることも珍しくないため、成人における先天性心疾患の手術を主に行う心臓外科医もいます。ただ多くの場合は、新生児や乳児のように、とても小さい子どもの手術を専門に行っています。

成人してから発症する心疾患

一般的に心臓外科が扱う病気の多くが成人してから発症するものです。

その多くは冠動脈疾患と呼ばれるもので、心臓を栄養する冠状動脈が閉塞、あるいは狭窄してしまう状態です。そのため心筋梗塞や狭心症を起こしており、心臓の機能回復のために冠状動脈バイパス術や冠状動脈形成術を行います。

また心臓弁膜症という心臓内の弁の異常がある患者様の治療を目的に、心臓弁の交換をしたり、弁を形成したりする手術を行うこともあります。

さらには重度の心不全の方の治療のために補助的な人工心臓を利用するための手術、そして心臓移植をすることもあります。

そのほか、不整脈の治療を目的としたメイズ手術と呼ばれる手術、ペースメーカーや植込み型除細動器の挿入なども行います。

血管疾患

特に心臓につながる大血管の異常を治療することも心臓外科で扱います。

これには、主に大動脈瘤や大動脈解離や閉塞性動脈疾患の修復が含まれます。

血管外科医は、特に血管系の病気を治療するための高度な訓練を受けた専門医です。血管には、酸素を多く含む血液を運ぶ動脈と、全身から心臓に血液を戻すための静脈がありますが、血管外科医は脳以外の体のあらゆる部分の静脈と動脈に関する問題に対応しています。

心臓外科での診察・治療の流れ

次に、心臓外科での一般的な診察や治療のながれについてご紹介します。

心臓外科へ紹介をしてもらう

心臓外科を受診するためには、通常は心臓外科の外来を直接受診することはなく、多くの場合は紹介してもらう必要があります。一般的にはかかりつけ医や普段診療を受けている循環器内科医が、内科的治療では困難であると判断した場合、あるいは外科的なアドバイスを必要とする場合、普段から連携している心臓外科を紹介してくれます。

なお緊急で心臓外科の手術が必要となる場合も、通常は内科や救急科の医師が先に診察をし、手術の必要性があると考えられる場合に心臓外科医に相談することが一般的です。

検査

心臓外科に相談する前に、事前にいくつかの検査が行われることが一般的ですが、心臓外科を受診したのちに、いくつか追加で検査が行われることもあります。

事前の検査では、心臓の病気そのものの重症度を評価するために行う検査もあれば、手術が必要となる場合に、手術に耐えうる状態であるかを判断するために行うものもあります。

心電図、胸部X線検査、心臓超音波検査(心エコー)、血液検査、尿検査などが一般的な検査項目です。加えてCT検査や心臓カテーテル検査を手術の前に行うこともあります。

術前の病状説明

これまでの病歴や診察所見、心電図やレントゲン写真を確認した後、外科医や内科系の主治医からなる、ハートチームのメンバーによる症例検討会(カンファレンス)がもたれることもあります。

その結果を受け、心臓外科医は手術が適切かどうか、適切な場合は推奨される手術の種類、具体的なリスクとメリット、回復のプロセスについて、手術を受ける本人やその家族に説明をする機会を設けます。

説明の場では、手術を受ける本人自身が持つ懸念があれば、主治医に質問することが望ましいです。

懸念が解決され、手術を実施することに合意されたら、手術の日時を予約します。またこの後、治療に関する説明を受けて同意をしたことを記録するために、「手術に関する説明と同意(インフォームド・コンセント)」の用紙に署名することが一般的です。

術前準備

既に入院中であり、そのまま入院を継続して手術が行われることもありますが、手術日に合わせて自宅から入院することもあります。

手術までの期間、術後に早期回復のために、いくつかの簡単な準備が必要です。

禁煙

タバコを吸っている人は、禁煙してください。喫煙すると、手術後に肺炎を含む肺の合併症が起こりやすくなります。また心臓の働きが悪くなり、動脈硬化の進行が促進されます。少なくとも、手術の3〜4週間前から禁煙することが推奨されます。

生活習慣の見直し

術前は、手術中にできない仕事などを先に片付けておくことを考えがちです。ただストレスなどの負荷がかかることは、心臓や血管にとって悪い影響を与えることがあり、病状が悪化する要因ともなります。

主治医からのアドバイスを聞き、生活習慣を見直して手術に備えます。また術前に風邪をひくと、手術そのものを延期することになるので、健康的な生活を送ることを心がけましょう。

手術前の入院

予定手術の場合は、あらかじめ決められた日に入院することになります。入院後は手術にむけて必要な準備が行われます。

また入院後に、主治医から具体的な手術の説明が改めて行われます。この説明は、本人だけでなく家族も含めて行われることが一般的です。さらには麻酔科の医師が術前日に病室を訪問して麻酔に関する説明も行われます。

このような準備を経て、手術の当日を迎えるのです。

心臓外科を選ぶ際のポイント

心臓外科は、ご説明したように直接受診することは少なく、内科系の医師から紹介されることが一般的です。したがって自分で心臓外科を選ぶ機会は少ないかもしれません。

とはいえ、心臓手術のために適切な外科医を見つけることは、大切なことです。そこでここでは、紹介を受けたときにできること、そして心臓外科を選ぶ際のポイントをご説明します。

病院のウェブサイトを確認する

適切な心臓外科を選ぶため、紹介を受けた上で追加情報を得ることが重要です。

一般的には、病院のウェブサイトを確認します。

受けようとしている手術に関する情報が記載されているはずです。勤務している医師の経験や病院全体での手術の件数などを確認してみましょう。また内科系や麻酔科の医師たち、また病院各部署との連携状況もわかる範囲で確認してみましょう。

より多くの情報を得ておくことが、安心できる情報を増やすためにできることです。ただし、病院が診療に関する情報を公開する際は、厚生労働省が定めた医療広告に関するガイドラインがあります。当然のことですが、公開情報は事実を記載すること、また読む人を誘導するような情報や他の医療施設との診療実績を比較するような情報を公開してはいけないことになっています。

なお第三者による病院評価に関するウェブサイトは、情報源としては適切ではない可能性があります。個人の感想はときに重要ではありますが、それぞれ置かれた状況は異なりますので、書かれていることをそのまま鵜呑みにすることは避けた方が良いでしょう。

信頼できる人に聞く

その病院で心臓の手術を受けた人を知っていれば、直接話を聞いてみてください。また紹介してくれた医師にも、病院の評判を聞いてみましょう。

心臓外科へ紹介する際には、現在の病状やこれまでの治療経過を記した診療情報が紹介元から共有されます。そして手術後は、必ず手術の結果やその後の経過を紹介元に返信されています。普段からこのような連携ができているところであれば、紹介してくれる医師も紹介先の病院のことをある程度は知っています。

紹介してくれる医師が信頼できるところであれば、安心して問題ないでしょう。

自分が信頼関係を築くことができそうか

最後に重要なポイントは、あなた自身その心臓外科医をどう思うか、ということです。

心臓外科医との関係は一生続くかもしれません。外科医が病状や手術方法を説明してくれますが、その話を聞いて感情的に安心できる必要があります。

心臓の手術は、命に直結するだけでなく、最も複雑な手術の一つです。自分の命を預けることができるほど信頼できる、そう感じることができれば問題はありません。

逆に信頼関係を築くことが困難だと感じるようであれば、セカンドオピニオンを求めて別の心臓外科を紹介してもらう必要があるかもしれません。

まとめ

ここまで心臓外科についてご説明をしました。

心臓外科では、心臓外科医を始め、他の医師や手術室のスタッフと普段から協力関係を築き、手術が円滑かつ安全に行われるように絶えず訓練を行っています。

患者様から信頼され、そしてその信頼に応えることができるように日々たゆまぬ努力を重ねているのが、真の心臓外科の姿ともいえるでしょう。

当院では大動脈弁形成術のエキスパートである國原先生を始め、豊富な経験を持つ外科医を始めする心臓外科のスタッフ一同が一丸となって、患者様お一人お一人の立場に最適な治療、手術を行っていきます。

「すべては患者様のために」をスローガンに、患者様のことを第一に考え、思いやりのある温かい医療を提供してまいります。心臓疾患でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

この記事の監修医師

宇都宮記念病院

心臓外科國原 孝

1991年、北海道大学 医学部卒業。2000年からはゲストドクターとして、2007年からはスタッフとして計9年間、ドイツのザールランド大学病院 胸部心臓血管外科に勤務し、臨床研修に取組む。2013年より心臓血管研究所付属病院 心臓血管外科部長、2018年より東京慈恵会医科大学附属病院 心臓外科 主任教授を経て、2022年より宇都宮記念病院 心臓外科 兼務。