狭心症の手術なら宇都宮記念病院

028-622-1991
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狭心症手術

動脈硬化などが原因で、心臓の冠動脈が狭くなり血流不足になることで、胸の痛みや動悸などの症状が現れる病気に「狭心症」があります。狭心症は、締め付けられるような胸の痛みを伴うのが特徴です。

狭心症手術

この狭心症の治療では主に「冠動脈バイパス手術」と「カテーテル治療」が行われています。今回は、各治療法の利点や欠点、手術方法を詳しく解説します。また、狭心症とはどのような病気か、手術適応となる場合も含めて解説していますので、治療を受ける上での参考にしてください。

狭心症手術とは? 

狭心症手術とは、虚血性心疾患のひとつである狭心症に対して行われる手術です。

虚血性心疾患とは動脈硬化などが原因で冠動脈と呼ばれる心臓の血管が狭くなり、血液の流れが悪くなる病気です。冠動脈は心臓の筋肉(心筋)に必要な栄養や酸素を届けており、血流が悪くなると、胸の痛みや動悸などの症状が現れます。

このような症状に対して行われているのが狭心症手術です。狭心症手術は主に2つの治療法があり、患者の病態や年齢、ライフスタイルなどを考慮して治療方法を決定します。

狭心症手術が必要となる病気

狭心症手術が必要となる「狭心症」と呼ばれる病気は、動脈硬化によって、冠動脈に血栓などができて血管が狭くなり、血流の流れが悪くなっている状態です。

冠動脈は、心臓の外側を走行しており心臓全体に酸素と栄養を送っています。右に向かって走行する血管を「右冠状動脈」、左に向かって走行する血管を「左冠状動脈」といい、さらに「左前下行枝」「左回旋枝」に分かれます。

狭心症では、この左右に分岐する冠動脈のどの部分に狭窄が起きるかで、症状や治療方法が異なるのが特徴です。冠動脈のうち、1本が詰まった状態を1枝病変、3本詰まった状態を3枝病変と呼び、詰まっている箇所が多いほど重症です。

狭心症の分類と症状

狭心症は3つの種類があり、それぞれ特徴と症状が異なります。ここでは狭心症の3つの種類の特徴を解説します。

労作性狭心症(安定性狭心症)

階段や坂道を上がる、運動する、心理的なストレスを受けるなど激しい運動をしたときに起こる狭心症が労作性狭心症です。

運動や力仕事、ストレスを感じると、その動作に応じて体は全身に多くの血液を送り出そうと、心臓はさらに力強く拍動します。しかし冠動脈の一部が狭くなっているため、心臓の拍動に必要な血液供給が追いつきません。

すると、胸の圧迫感や痛み、のどから顎にかけて締め付けられるような感覚が症状として現れます。この症状は15分以内に収まることが多く、短い時間で痛みが起こるのが特徴です。

不安定狭心症

冠動脈の一部が何らかの原因で完全に詰まってしまうと、心筋に栄養が運ばれずその部分が壊死してしまいます。これが、皆さんがよく知っている「心筋梗塞」と呼ばれる病気です。狭心症のなかには、発症からみるみるうちに進行して心筋梗塞に移行する場合があり、これを不安定狭心症と呼んでいます。

労作性狭心症とは異なり、痛みが徐々に強くなる、安静時にも発作が起こる、発作の回数が増えるなどの症状が特徴で、狭心症の症状が安定していた人にこのような症状の変化が現れたときは、すぐに医療機関を受診してください。

異型狭心症(冠攣縮性狭心症)

決まった時間帯や、決まった行動で胸が圧迫される、締め付けられる、息切れなどの症状が起こるのが異型狭心症です。

特定の行動や時間帯に、冠動脈の一部が一時的に痙攣して収縮することで酸素不足になり、心筋にうまく血液が届かないことで起こります。狭心症の多くは、動脈硬化が原因ですが、異型狭心症は大きな動脈硬化がなくても起こる場合があります。

狭心症の症状

狭心症の症状は、胸の痛みや胸を締め付けるような圧迫感が特徴です。心臓に負担をかけるような運動、例えば坂道や階段を上る、重い荷物を持つなどの動作をしたときに起こります。また心理的なストレスや寒暖差でも同じような症状が起こる場合があります。

狭心症の痛みが起こる主な場所は胸ですが、ほかにも胸の周囲のさまざまな部位で痛みが発現します。例えば以下のような部位になります。

  • 胸の中央部分から胸全体の痛み
  • 背中や上腹部の痛み
  • 左腕の内側の痛み
  • のどや顎にかけての痛み
  • 首の痛みなど

また、その痛み方は胸を締め付けるような痛みだけではなく、胸が重たく感じたり、圧迫されているように感じたりします。このような症状が現れると、呼吸が苦しくなったり冷や汗をかいたり、吐き気、胃の痛みを伴うこともあります。

狭心症の原因

狭心症の主な原因は動脈硬化です。動脈硬化とは、動脈の内側にコレステロールなどが溜まることで、血管が詰まったり硬くなったりしている状態です。

動脈硬化が進むと、血管が分厚くなり血管が狭くなります。また、血管内にコレステロールが溜まることで、血管の内側にプラークと呼ばれるコブを作ります。このプラークが大きくなって破裂すると、血栓ができて血管を塞いでしまうのです。この状態が心筋梗塞です。

動脈硬化は、血管の老化現象のため加齢とともに誰にでも起こります。しかし、加齢以外にも高血圧や脂質異常症、糖尿病、たばこなどは動脈硬化を早める要因です。こうした要因を危険因子と呼んでいます。

そのほかにも肥満やストレスなども動脈硬化を進行させる要因です。

狭心症手術の適応 

狭心症手術は症状とさまざまな検査によって、冠動脈バイパス手術とカテーテル治療のどちらの治療を行うか決定します。

検査の結果、軽度であれば投薬によって治療を行うのが一般的です。狭心症の発作を抑える「ニトログリセリン」を発作時に使用して症状を抑えます。また、血流を改善する薬や血液が固まらないようにする薬などを使用して、心臓の状態を安定させます。

狭心症は定期的な検査が必要です。心電図検査や心エコー検査、ホルター心電計、冠動脈造影検査、冠動脈CT検査などを行い、症状の進行具合に応じて冠動脈バイパス術とカテーテル治療を行います。

通常は、冠動脈の根元付近に起こっている1枝病変ではカテーテル治療を行います。冠動脈の枝先に病変がある場合や、2枝以上の病変が起きている場合には冠動脈バイパス術を選択することが多いでしょう。

冠動脈バイパス手術(CABG)の利点・欠点

冠動脈バイパス術(CABG)は、冠動脈の狭窄や閉塞で起こる心筋梗塞や狭心症に対して行われる手術です。

心筋梗塞や狭心症で、狭くなった末梢血管に、胸の内側や下腿から採取した新しい血管をつなぐことで、新しい血液の流れをつくる手術です。病状に合わせて患者さんの負担の少ない方法で手術法を選択します。

ここでは冠動脈バイパス術の利点・欠点を解説します。

冠動脈バイパス手術の利点

冠動脈バイパス手術の利点は、狭心症や心筋梗塞を再発させやすいカテーテル治療に比べて、血流を完全に改善できるという点です。

冠動脈の一部の狭窄を改善しても、冠動脈そのものは全体的に動脈硬化を起こしているため、治療後も別の部位が狭窄を起こしてしまう可能性があります。しかし、冠動脈バイパス手術で、動脈硬化を起こしていない血管を使って、新たに末梢までの血流を確保できれば、再狭窄を起こしても血流量は変わりません。

冠動脈バイパス手術の欠点

冠動脈バイパス術の欠点は、カテーテル治療に比べて治療時間が長くなることや、傷跡や患者の体への負担が大きくなる点です。

カテーテル治療は通常、太ももや手首などに小さく切開してそこからカテーテルを挿入します。メスを入れる切開痕は小さく、出血量もわずかです。

一方、冠動脈バイパス術は全身麻酔を使った、開胸手術です。また、バイパスに使う血管(グラフト)は、胸や足、手首、胃のいずれから採取するため、手術時間も長くなり、複数個所に傷跡ができます。

冠動脈バイパス手術の方法 

冠動脈バイパス手術は、全身麻酔を使用して開胸手術で行います。狭窄や詰まっている冠動脈の先に、体のほかの部分から取り出した血管を、狭窄部分を挟むようにして末梢血管に縫合して、血流を確保する手術です。

バイパスとして使用する血管(グラフト)は、肋骨の内側にある内胸動脈、脚の大伏在静脈、胃の胃大網動脈、手首の橈骨動脈、などが使われます。これらは一部を採取しても、その部位の血流には影響がない血管です。

手術時間は移植する血管の数に応じて2~4時間程度です。通常は2枝以上の病変で行われる手術ですが、3、4枝病変がある場合では、バイパスする数が多くなるため手術時間は長くなる傾向にあります。

冠動脈バイパス術は通常、人工心肺装置と呼ばれる医療機器を使って手術を行います。心臓の手術を行うときは、心臓の拍動や血流が手術の妨げになりますが、手術のために心臓や血流を止めてしまうと命の危険があります。そこで、一時的に生体の心臓、肺の働きの代わりをする装置として用いられているのが人工心肺装置です。

しかし2000年ごろより、人工心肺装置を使用せず、心臓を拍動させたままのオフポンプ手術が行われるようになってきました。現在では、日本で行われている冠動脈バイパス手術の半数以上がオフポンプ手術です。

心臓を一時停止しないため、人工心肺装置を使用する症例に比べて患者の負担は軽減します。一方で、病状によっては人工心肺装置を使用した方が良いこともあるでしょう。また低侵襲心臓手術としてMICSと呼ばれる術式も採用されています。どの術式を選択するかは、患者の状態によって異なります。

カテーテル治療の利点・欠点

冠動脈内にプラークができることで血管が狭くなっている場合は、カテーテル治療で経皮的冠動脈形成術(PCI)と呼ばれる治療を行います。1枝病変では、カテーテル治療を行うのが一般的です。

ここではカテーテル治療の利点・欠点を解説します。

カテーテル治療の利点

カテーテル治療の利点は、冠動脈バイパス手術に比べて体の負担が少ない点です。治療中は局所麻酔を使用し、入院日数も最短1泊2日です。

手術が終わった数時間後から歩行も可能で、冠動脈バイパス術のように数日間ベッド上で安静にする必要はありません。そのため、高齢者でも体の負担を軽減して治療を受けられます。

カテーテル治療の欠点

カテーテル治療の欠点は、冠動脈バイパス手術に比べて再発率が高い点です。カテーテル治療は、狭窄が起きている部分のみに治療を行うため、その付近やほかの枝にまた狭窄ができることも少なくありません。

また、2枝病変や3枝病変がある場合には、カテーテル治療では対応できず冠動脈バイパス手術が選択されます。

カテーテル治療の方法

カテーテル治療は、冠動脈造影検査と同じ要領です。

手や足の動脈から細いカテーテルを挿入して、カテーテルを冠動脈の狭窄が起きている部分まで入れていきます。狭窄部分までカテーテルが届いたら、先端が風船のように膨らむバルーンカテーテルを使って、狭窄が起きている部分を押し広げます。狭窄部分を拡張したら、ステントと呼ばれる金属チューブを留置して治療は終了です。

ステントを留置することで、その部分の再狭窄を防ぎます。ステントには血栓を予防する薬剤が塗布されており、ステントを留置した場所の再狭窄率や合併症は大幅に減少しています。

まとめ

狭心症は、動脈硬化などが原因で、心臓の冠動脈が狭くなり血流不足になることで、胸の痛みや動悸などの症状が現れる病気です。胸の痛みが特徴で、主に動脈硬化が原因で起こります。

治療法には冠動脈バイパス手術とカテーテル治療があり、病状によって治療法や術式が異なります。今回解説した、それぞれの治療法の利点・欠点、方法を参考に、気になる症状があれば循環器科を受診しましょう。

当院では大動脈弁形成術のエキスパートであり、僧帽弁形成術にも造詣が深い國原先生を始め、豊富な経験を持つ外科医を始めする心臓外科のスタッフ一同が一丸となって、患者様お一人お一人の立場に最適な治療、手術を行っていきます。

「すべては患者様のために」をスローガンに、患者様のことを第一に考え、思いやりのある温かい医療を提供してまいります。心臓疾患でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

この記事の監修医師

宇都宮記念病院

心臓外科國原 孝

1991年、北海道大学 医学部卒業。2000年からはゲストドクターとして、2007年からはスタッフとして計9年間、ドイツのザールランド大学病院 胸部心臓血管外科に勤務し、臨床研修に取組む。2013年より心臓血管研究所付属病院 心臓血管外科部長、2018年より東京慈恵会医科大学附属病院 心臓外科 主任教授を経て、2022年より宇都宮記念病院 心臓外科 兼務。