前癌病変とごく一部の早期肺癌

原発性肺癌(肺、気管支が発生母地の癌)の標準術式は、現在でも肺葉切除(肺は右が3葉、左は2葉に分かれているため、発生部位の葉ごと摘出)または肺摘除(片側全て摘出する)と肺門・縦隔リンパ節郭清術に変わりはありません。しかし、近年のHRCTの普及に伴い、胸部レントゲン写真に写らないような小さなスリガラス陰影(ground glass opacity ; GGO)が、発見されるようになりました。これらを調べた結果わかったことは、肺腺癌の前癌状態と考えられる異型腺腫様過形成(atypical adenomotous hyperplasia ; AAH)や限局性の気管支肺胞上皮癌(localized bronchioloalveoral carcinoma ; BAC)であるということです。BACは内部のスリガラス面積の割合や線維化の程度でタイプA, タイプB, タイプCといった分類がなされ、これを野口分類といいます。実際、画像診断でAAHとBACのタイプA, タイプBの鑑別は難しく、病理診断で初めて確定することも多いようです。従って、このような病変に対して標準術式が果たして妥当かという議論がなされ、様々のstudyの結果、だいたい次のようなコンセンサスが得られています。まずAAHは肺部分切除で十分、タイプA, タイプBに対してもほぼ100%リンパ節転移が見られないことから大きめの肺部分切除でよいであろう。タイプCに関してはリンパ節転移がみられる場合もあり、標準術式あるいは区域切除(肺葉はいくつかの区域で構成される)が必要であろうということです。

細径胸腔鏡下手術は、このような病変に対しても適応はありますが、病理診断でタイプC以上であれば、標準術式を選択せざる得ないことを留意してください。 なお、画像診断で間違いなく癌(野口分類のタイプA,B,C以外の充実性のタイプ)を疑う症例に対しては、本法は施行しないことを重ねて述べておきます(ただし、呼吸機能やその他の理由でやむを得ない場合を除く)。

病理診断:異型腺腫様過形成(AAH) 病理診断:野口分類タイプA 病理診断:野口分類タイプC