自然気胸(spontaneous pneumothorax)
自然気胸の場合、入院時にすでに胸腔ドレーンが挿入され、吸引器による脱気がなされていることがほとんどです。従って、もともとドレーン挿入孔に傷があるわけですから、メスを加える必要はなく、この孔をone windowとして利用します。
2〜3日脱気を続けても空気漏れが治まらない場合や再発症例、また、初発でも胸部CTで明らかに気腫性のう胞(ブラ)が確認され、再発率が高いことから本人の手術承諾が得られた場合などが手術適応となります。自然気胸の手術は、高度の癒着(肺と胸壁がくっついてしまうこと)がない限り、胸腔鏡下手術で行うことが一般的です。
画像診断にてブラの位置確認を行うには、高分解能CTにて1mm間隔でthin section sliceを撮影すると明瞭になります。一般にブラは肺尖部に発生する事が多いため、肺尖部を中心にthin section sliceを撮るようにしてます。

特徴
- 20歳代にピーク、男性に多い
- 体格は細長の痩せ型に多い
症状
- 突然の胸痛、咳嗽発作、呼吸困難
原因
- ほとんどが気腫性嚢胞(ブラ、ブレブ)の破裂によるもの
治療の種類
内科的治療
- 安静
- 脱気
- 胸腔ドレナージ
- 胸膜癒着療法
外科的治療
- 胸腔鏡下手術 (Video-assisted thoracic surgery ; VATS)
- 開胸手術
| 肺の虚脱の程度 | 処置 | 初回治療の再発率 |
|---|---|---|
| 片側に気胸をおこした場合、対側に起こす可能性→10〜15% | ||
| 軽度 | 安静療法 | 60% |
| 中等度 | 胸腔穿刺 | 40% |
| 高度 | 胸腔ドレナージ | 35% |
自然気胸の手術適応
絶対的適応
- ドレナージによっても空気漏れが持続し、肺の膨張が得られないもの
- 著明な血胸を伴うもの
- 胸腔ドレナージ
- 両側気胸で再発を繰り返すもの
相対的適応
- 再発したもの
- 初発例でも明らかに嚢胞が確認されるもの
胸腔鏡下手術について
大きく皮膚を切開せずに、胸に小さな傷を数カ所開け、特殊な手術器具を胸の中に挿入しながらビデオモニター下におこなう手術(原則的に全身麻酔)。
低肺機能や超高齢者の気胸では、局所麻酔下による胸腔鏡下肺瘻閉鎖術も行っている。
当院における胸腔鏡下手術
従来の胸腔鏡下手術よりさらに低侵襲な細径光学視管・器具を用いた方法をおこなっています。 ドレーンがすでに挿入されている方はその穴を利用し、皮膚切開はおこなわずその他の穴は穿刺のみでおこないます。
細径胸腔鏡を用いた手技

- 細径鉗子
- 10mm光学視管
- ミニループリトラクター
- 細径光学視管(2mm or 3mm)
- 自動縫合器
成績
本法にて手術をおこなった34例の成績
(平成12年9月〜平成14年12月:獨協医科大学胸部外科)
- 平均年齢30.8歳
- 手術時間78分
- 出血量8.8ml
- ドレーン留置期間1.2日
- 術後在院日数4.8日
- 再発率7.8%
当院での成績(N=98)(平成15年3月〜平成20年3月)
- 平均年齢25.4歳
- 手術時間58.3分
- 出血量1.5ml
- ドレーン留置期間1.2日
- 術後在院日数2.5日
- 再発率6.8%
- ※切除断端(ステープルライン)にポリグルコール酸フェルトの貼付を行っている。
胸腔鏡手術の利点
- 術後疼痛が少ない
- 傷跡が目立たない
- 早期退院が可能
- ドレーン固定の糸以外抜糸不要
胸腔鏡手術の欠点
- 高度癒着がある場合は施行できない
- 術後の再発率は開胸術に比べやや劣る
- 医療費は開胸術よりやや高い