胸腔鏡下手術について

胸腔鏡下手術風景イメージ

平成に元号が変わる頃までは、多くの施設がどんなに小さな病変でも開胸術(胸を切って肋骨を大きく開ける手術)で行っていました。90年代に入り内視鏡下手術が普及し始め、腹部外科領域で腹腔鏡下胆嚢摘出術が脚光を浴びてきました。お腹は腹腔鏡、胸部は胸腔鏡といった言い方をします。胸腔鏡の歴史は古く、一部の施設で診断を目的とした検査に用いられていましたが、治療に応用され始めたのは90年代になってからです。 最初は自然気胸や良性縦隔腫瘍、診断未確定病変の肺生検などが主でしたが、徐々に原発性肺癌(標準術式は肺葉切除)や胸腺腫(まだ、一般的ではない)にも適応が拡大してきました。現在では、これまで不十分とされていたリンパ節郭清も開胸術に劣らず可能であるといった意見も出てきています。ただし、全ての手術可能な肺癌がこの手技で行えるというわけではありませんので、誤解しないようにして下さい。肺癌には進行度(ステージ分類)があり、進行肺癌にはこの手術法は向きません。

では実際どのように手術を行うのか説明します。誤解を受けやすいのは、内視鏡下手術というと、胃カメラや大腸ファイバー、気管支鏡下に病巣を摘出するといった印象があるかもしれません。これらも広義の意味では内視鏡下手術でありますが、ここで述べるのは、管腔臓器を介してカメラを挿入するのではなく、体外より皮膚に小切開を加えカメラ(光学視管)を挿入する体外アプローチの方法です。従って、ほとんどの場合、全身麻酔が必要です。

胸部の場合、胸腔という閉鎖腔の中に肺が膨らんだ状態で納まっています。胸腔内は常に陰圧の状態で、外界と交通すると胸腔内の圧が陽圧となり、それだけでも胸腔と肺の間にスペースが生じます。腹部の場合には気腹といってある特殊なガスをお腹に注入し、腔を形成させます。肺の手術をおこなう場合には、全身麻酔の際、分離肺換気用の特殊な気管内挿管チューブを挿入します。これは肺を切除する際に、十分肺を虚脱(萎ませること)させる必要があるからです。その間は反対側(健側肺)で換気をします。この様な理由で分離肺換気が必要となります。

手術体位は側臥位が基本です。ちょうど水泳でクロールをやっている様な格好です。皮切(切開)は通常1〜2センチで、肋間(肋骨と肋骨の間)に2〜3カ所加えます。摘出する検体が大きな場合には、ミニ開胸といって5〜8センチ程度の皮切を加えることもあります。術者はカメラを通して映し出された視野を、テレビモニターを見ながら手術します。手術を行っている状態は周りにいるスタッフ全員が見ることが出来ます。また手術はビデオ録画され、あとで患者さんやその家族も見ることが出来ます。これまで密室の行為とされていた手術がopenにされるようになりました。