なぜ、CTでの検診が必要なのか
一般に肺癌の予後は非常に悪いといったイメージがあります。日本呼吸器外科学会がおこなった最新のデータでも、手術症例(手術ができる症例)での1年生存率は84.1%、2年生存率71.3%、3年生存率62.3%、4年生存率56.1%、5年生存率51.9%です。つまり手術を受けても5年後には半分の人しか生存していないことになります。しかしこれは全部のステージ(病期)を含めたデータで、実際は各病期によって異なります。肺癌にはステージ1期から4期まであり、1〜3期まではさらに細かくそれぞれの病期にA,Bと分かれ全部で7段階に分類されます。
手術が可能なのは、ステージ3A期までが一般的です。ステージを決めるのは腫瘍の大きさや、肺門、縦隔へのリンパ節転移、多臓器転移の有無です。よく、ステージ1期で良かったという言葉を聞きますが、実際、ステージ1期の生存率はどれくらいかご存じでしょうか。術前病期(手術前に画像診断を中心に決めた病期)と術後病期(手術後に病理診断で判明した病期)で異なりますが、だいたい60〜70%といったところです。では、最も早い段階のステージ1A期手術症例の5年生存率はどれくらいかというと、術前病期で71.5%、術後病期で79.2%です。この数値は胃癌や大腸癌と比べて、決して満足いくデータではないと思われます。
では何故それ程悪いのかという原因について述べます。 ステージ1A期とは腫瘍の大きさは3cm以下で、かつ肺門・縦隔リンパ節転移のないもの(多臓器転移は当然なし)をいいます。しかしこれは手術前に胸部CTなどで決めた術前病期です。実際に術前CTでリンパ節転移を示唆する所見がなくても、手術の際、郭清したリンパ節が病理診断では陽性といったことがあります。従って術前にステージ1A期と言われていたのに、術後はいきなりステージ3期になってしまいます。予後を最終的に決めるのは術後病期です。
先に早期肺癌のことを述べましたが、これはステージ1A期のなかでも腫瘍の大きさが2cm以下のものをいいます。早期肺癌でさえ5年生存率が100%とならない理由に、腫瘍径とリンパ節転移の関係があります。諸説がありますが、例えば腺癌では、腫瘍径2cm以下と1.5cm以下でリンパ節転移の確率は異なり、前者で8〜28%、後者で20%といったデータもあります。一方、末梢発生の扁平上皮癌では2cm以下はほとんどリンパ節転移はないというデータもあります。現在わかっているのは、リンパ節転移がないのは、限局型の気管支肺胞上皮癌(野口分類のタイプA,B)ぐらいであろうということです。
ここで強調したいことは、肺癌の発見は早ければ早いに越したことはないと言うことです。胸部単純X線で発見できないような微小な陰影でも、ヘリカルCTを撮影しておけば発見できます。あまり神経質になる必要はありませんが、これからはCTによる検診を受け、問題があれば専門医とよく相談していくことが重要と思われます。